フェチの神様。(フィクションです) 俺の朝は寝ている妻のメディキュットを脱がすところから始まる。 そして猫のトイレ清掃。エサと水替え。 チビの朝ごはん。歯磨き。保育園に送り届け。 一通り終わると、そこから自分の仕事に出かける。 それがここ数年の朝のルーティンだ。 自営の仕事で景気良く稼いでいた俺だが、数年前の爆発的な流行り病の影響で全てがガラッと変わった。 相次ぐ得意先の業務縮小。 かつては笑って酒席で盃を酌み交わしていた得意先の担当者が一斉に背を向けるのを、俺はただ呆然と眺めることしか出来なかった。 家計が崩壊しかけた我が家を救ったのは妻だった。 産休明け直後から管理職としてバリバリ働く妻には感謝している。 俺は必死にかき集めた仕事をやりながら家事育児を積極的に行う。 家族はチームだ。 俺はチームの為に今出来ることを最大限にこなすのだ。 … 家事・育児・そして家でのパソコン業務を終えた俺はそっとパソコンを閉じた。 深夜2時。これから寝るまでのほんの僅かな時間が俺の癒しの時間だ。 クローゼットの奥に隠してある小さな袋に手を伸ばす。 その時だ。俺はまるで「後ろから誰かに口と鼻を押さえられた」かのように突然呼吸困難に陥った。 理由はわかっている。俺は家族にも伝えていない持病を持っていた。 もう数年前になる。 日々の激務。身内の不幸。そこに隣人とのトラブルが重なった時に、それは突然発症した。 突然襲い掛かる得体の知れない不安。呼吸困難。手足の痺れ。 医者からは「不安症」と診断された。 「気持ちが弱いから」といった漠然とした理由ではなく、「脳内に不安を感じる物質が異常に分泌される」という、歴とした病気だそうだ。 (くそっ…もうすっかり症状も出なくなったから治ったと思ってたのに…) 呼吸困難と手足の痺れで意識が朦朧とする中、必死に机の引き出しを探る。 何も無い。 当然だ。抗不安薬はとっくの昔に飲み切っている。 床に倒れ込む。猛烈な不安が襲ってくる。頭に「死」という文字が浮かんだ。 その時、手に小さな袋を握りしめていることに気がついた。 まるで天啓のように、とある考えが閃いた。 必死にその袋を開け、中から小さな布切れを取り出す。 推し様からお譲りいただいたおパンツだ。 クロッチ部分に鼻を当て、ゆっくりと吸い込む。 甘く香ばしい香り。多幸感に包まれる。 3回、4回と吸い込んでゆくうちに、ゆっくりと発作は静まっていった。 その時俺は悟った。 (そうか…!このおパンツは単なる性癖じゃない。神様が俺の健康のために授けてくれた聖なる贈り物だったんだ…!) ゆっくりと起き上がり窓を開けた。空にはキラキラと星が輝いていた。 (フェチの神様ありがとう…!おかげで命が助かりました…!) 俺はそう祈らずにはいられなかった。 … … フェチの神様「知らんがな」 おしまい。笑。